不動産取得税とは、土地や建物などの不動産を取得した際に一度だけ課される地方税です。不動産の取得は人生における大きなイベントの一つであり、その際に発生する税金について正しく理解しておくことは非常に重要です。特に初めてマイホームを購入される方や、不動産投資を始めたいと考えている方にとって、不動産取得税の知識は無駄な支出を防ぐうえで大きな助けになります。
本記事では、不動産取得税の基本的な仕組み、課税対象や計算方法、軽減措置の具体的な内容、納税と申告の流れ、免税点の考え方まで幅広く丁寧に解説しています。最後には、一目で要点を確認できる総まとめ表もご用意しました。

不動産取得税とは?
不動産取得税は、不動産(土地や建物)を取得したときに課税される一回限りの地方税です。取得方法は売買、贈与、新築、増築、改築など多岐にわたり、有償・無償、登記の有無に関係なく課税対象となります。
なお、例外として「相続による取得」は非課税です。これは、相続税の課税対象となるため、不動産取得税の対象からは除外されます。
課税主体は不動産が所在する都道府県であり、納税先も同様です。納税のタイミングは取得直後ではなく、取得後半年から1年以内に都道府県から納税通知書が送付されるのが一般的です。
不動産取得税の計算方法
不動産取得税の基本的な計算式は以下のとおりです。
不動産取得税額 = 固定資産税評価額 × 税率
固定資産税評価額とは、市区町村が固定資産税を課すために設定している価格です。これは実際の売買価格とは異なり、一般的には土地の場合は時価の7割程度、建物の場合は5~6割程度の金額が設定されています。
税率は原則4%ですが、住宅用地や住宅については軽減措置により3%に引き下げられています。この軽減税率は2027年3月31日までの取得に対して適用されます。
住宅に対する軽減措置
住宅の取得にあたっては、不動産取得税の軽減措置が設けられています。新築と中古住宅で内容が異なりますが、条件を満たすことで大きな控除が受けられます。
新築住宅
新築住宅の場合、以下の条件を満たすと固定資産税評価額から控除が受けられます。
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床面積が50m²以上240m²以下(賃貸住宅は40m²以上)
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自己の居住用であること
| 住宅の種類 | 控除額の上限 | 条件 |
|---|---|---|
| 一般の新築住宅 | 最大1,200万円控除 | 床面積や居住用途などの要件を満たす場合 |
| 認定長期優良住宅 | 最大1,300万円控除 | 2026年3月31日までに取得し、認定を受けている場合 |
中古住宅
中古住宅でも以下の要件を満たすと控除を受けられます。
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自己の居住用であること
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床面積が50m²以上240m²以下
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一定の耐震基準を満たすこと(築年数や証明書の提出が必要)
| 区分 | 控除額の目安 | 主な条件 |
| 中古住宅 | 最大1,200万円控除 | 耐震基準・居住用・面積などの条件をすべて満たすこと |
土地に対する軽減措置
住宅用地を取得した場合にも、以下の特例措置があります。
まず、住宅の敷地であることが確認されると、固定資産税評価額が1/2に軽減されます。そのうえで、以下のどちらか高い金額が不動産取得税から控除されます。
| 判定方式 | 計算式 |
| 定額方式 | 150万円 × 税率(3%) |
| 面積連動方式 | 土地1m²あたりの価格 × 住宅床面積の2倍(上限200m²) × 税率(3%) |
土地を先に取得し、後に住宅を建てる場合は、住宅完成後に減額申請をすることで税の還付を受けることが可能です。申請には必要書類の提出が求められます。また、住宅が完成するまでの間に一時的に納税を猶予する「徴収猶予制度」もあります。
不動産取得税の免税点
課税対象の不動産であっても、その価格が一定額未満の場合は課税されません。これを免税点と呼びます。
| 不動産の種類 | 取得方法 | 非課税となる評価額の上限 |
| 土地 | すべて | 10万円未満 |
| 建物(新築) | 建築による取得 | 23万円未満 |
| 建物(中古) | 売買・贈与など | 12万円未満 |
納税と申告の手続き
納税方法
納税通知書は都道府県税事務所から送付され、取得後半年~1年以内に届きます。納付期限までに、以下のいずれかの方法で納付を行います。
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金融機関(銀行・信用金庫)
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都道府県税事務所の窓口
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コンビニエンスストア(バーコード付き通知書)
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オンラインバンキング(対応している自治体のみ)
申告と軽減措置の申請
原則として、不動産取得から60日以内に「不動産取得税申告書」を都道府県税事務所に提出します。取得日から60日以内に登記を行った場合には、申告が省略されることがあります。
軽減措置の適用を受けるには、別途申請が必要です。以下のような書類を添付する必要があります。
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住民票
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建築確認済証または検査済証
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登記事項証明書
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売買契約書や贈与契約書の写しなど
これらの手続きを怠ると、軽減措置が適用されず、本来より多くの税金を支払うことになるため、早めの対応を心がけましょう。
不動産取得税のポイントを押さえて安心の手続きを
不動産取得税は、支払いのタイミングが遅いため見落としがちですが、取得後に忘れずに対応することが求められます。また、軽減措置や免税点を活用することで、節税につながる場合があります。
しっかりと内容を把握し、申告や申請を適切に行うことで、余計な出費を防ぎましょう。疑問がある場合や複雑な条件に該当する場合は、税理士や都道府県の税事務所に相談するのがおすすめです。
【総まとめ表】不動産取得税のポイント一覧
| 区分 | 内容 | 備考 |
| 税の種類 | 地方税(都道府県に納税) | 国税ではない |
| 課税対象 | 不動産(家屋・土地)の取得 | 売買・贈与・新築・増改築などすべて含む |
| 非課税例 | 相続による取得 | 登記の有無を問わず非課税 |
| 税額計算式 | 固定資産税評価額 × 税率 | 実際の取得価格とは異なる評価額が使用される |
| 税率 | 原則4%、住宅・宅地は3%(特例) | 特例は2027年3月31日まで適用 |
| 新築住宅軽減 | 最大1,200万円(長期優良住宅は1,300万円) | 条件:床面積・自己居住などを満たす必要あり |
| 中古住宅軽減 | 最大1,200万円控除 | 条件:耐震性・居住用・床面積の要件あり |
| 土地軽減措置 | 評価額1/2+定額or面積連動控除 | 住宅用地と認められることが前提条件 |
| 免税点 | 土地:10万円未満 建物(新築):23万円未満 建物(中古):12万円未満 | 基準未満の場合は課税対象外 |
| 納税時期 | 不動産取得後半年~1年以内に通知書が届く | 指定期日までに納付が必要 |
| 納税方法 | 銀行、コンビニ、県税事務所、オンライン | 自治体によって対応の幅に違いあり |
| 申告期限 | 原則60日以内(登記があれば省略可) | 軽減措置適用には別途申請が必要 |

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